パッケージシステム+カスタマイズ開発の落とし穴と対策

1.はじめに
システム開発の方法には、大きく分けて以下の3つの選択肢があります。
- スクラッチ開発(フルカスタム):完全にゼロから開発する
- パッケージシステム導入:既存のソフトウェアをそのまま利用する
- パッケージシステム+カスタマイズ:既存システムをベースに一部をカスタマイズする
コストと柔軟性のバランスを考えると、「パッケージシステム+カスタマイズ」が最適解に見えます。
しかし、このアプローチにも見落とされがちなデメリットやリスクが潜んでいます。
本記事では、その落とし穴と回避策を解説します。

2. 想定以上のコストがかかる
問題点
「パッケージをカスタマイズする方が安い」と考えがちですが、実際には想定以上のコストが発生することが多いです。
- カスタマイズの範囲が膨らむ → 開発費が増加
- パッケージとの互換性を保つ必要がある → 高度な技術が必要
- テストコストが増える → 既存機能との動作確認が複雑
- 保守管理費は特殊な分割高
例えば、ERP(基幹システム)のカスタマイズでは、標準機能の変更が必要になると数百万円~数千万円単位の追加費用が発生することもあります。
対策
・ カスタマイズ範囲を最小限に抑える(「本当に必要な変更か?」を事前に検討)
・ パッケージの標準機能を最大限活用する
・ ベンダーと十分な打ち合わせを行い、隠れたコストを把握する
3.アップデートの障害になる
問題点
パッケージシステムは定期的なアップデートが行われますが、カスタマイズを施すことでアップデートが難しくなる場合があります。
- カスタマイズ部分が公式アップデートで上書きされる
- 新バージョンで互換性が失われる
- アップデートのたびに追加開発が必要になる
例えば、ECサイト用のCMS(ShopifyやMagentoなど)をカスタマイズすると、公式アップデートの影響で動作しなくなる可能性があるため、都度修正が必要になります。
対策
・ 公式の拡張機能(プラグイン・モジュール)を活用し、直接改修を避ける
・ アップデートポリシーを確認し、互換性を維持できる方法を選ぶ
・ カスタマイズの影響範囲を常に把握する(ドキュメント化する)
4.サポートが受けられなくなる
問題点
パッケージソフトの多くは、ベンダーのサポートを受けることで安定運用できます。しかし、カスタマイズを加えるとサポート対象外になることがあります。
- 「標準機能以外は対応できません」とサポートを断られる
- 問題の切り分けが難しくなる(バグなのかカスタマイズの影響なのか不明)
- バグ修正が遅れる(自社で対応する必要がある)
例えば、業務管理システム(ERP)をカスタマイズすると、「カスタマイズ部分が原因で不具合が発生している可能性がある」として、ベンダー側が対応してくれないケースがあります。
対策
・ カスタマイズ可能な範囲を事前にベンダーに確認する
・ ベンダーが提供するAPIやカスタマイズ用フレームワークを活用する
・ 独自カスタマイズ部分のサポート体制を社内で整える
5.社内の運用負担が増える
問題点
カスタマイズしたシステムは、運用の手間も増えます。
- マニュアル通りに操作できなくなる → 社員教育の負担増
- 担当者が変わると運用が困難に → ナレッジの属人化
- トラブル対応のスピードが落ちる → 業務停止リスク
例えば、パッケージのワークフロー機能を独自に改修した結果、新しい社員が「マニュアルと操作方法が違う」と混乱し、習熟に時間がかかるケースがあります。
対策
・ 運用ルールを明確化し、マニュアルを整備する
・ カスタマイズの目的や仕様を社内で共有し、属人化を防ぐ
・ トラブルシューティングの手順を文書化しておく
6.ベンダーロックインのリスク
問題点
カスタマイズしたシステムは他のパッケージに移行しづらくなるため、長期的に特定のベンダーに依存することになります。
- カスタマイズ部分が他のシステムと互換性がない
- 移行時のデータ変換が困難
- 長期的に高コストになる可能性がある
例えば、特定の会計システムを大幅にカスタマイズすると、別のソフトウェアに乗り換える際に、データの整合性を保つために追加開発が必要になり、移行費用が膨らむことがあります。
対策
・ カスタマイズを最小限に抑え、汎用的な設計を心がける
・ APIを活用し、データのポータビリティを確保する
・ 将来的な移行を見越した設計を行う
7.まとめ:パッケージカスタマイズは慎重に!
「パッケージシステム+カスタマイズ」は、コストと柔軟性のバランスを取るための有力な選択肢に見えますが、安易に手を出すと想定以上のリスクが発生します。
カスタマイズの際に意識すべきポイント
・ カスタマイズ範囲を最小限にする(できるだけ標準機能を活用)
・ アップデートやサポートの影響を考慮する
・ 運用の負担を最小限に抑えるため、ドキュメントを整備する
・ 将来的な移行を見据えた設計を心がける
「安くて便利」と思って始めたカスタマイズが、後々大きな負担になることを防ぐためにも、事前の計画とリスク管理が重要です。
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この記事を書いた人
株式会社ウェブロッサムの
代表:水谷友彦
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