在庫/WMS“ここだけスクラッチ”:既存と噛み合わせる方法(名古屋版)
1.はじめに

「全部入れ替えるのは重い。でも、この詰まりだけ何とかしたい」。
名古屋・愛知の現場で在庫やWMSの相談を受けると、そういう声にたくさん出会います。
答えはシンプルで、既存は活かす/“詰まりだけ”はスクラッチで補うという切り分けを先に決めること。
バックボーン(販売管理や会計の基幹)をいじらず、ロケーション・ロット・棚卸・引当といった「現場の手触り」を小さく作り替えていくと、短期間で在庫差異や欠品が落ち着きます。
本稿は、そのやり方を読み物としてまとめたガイドです。
2. まず“詰まり”を1行で決める:差異? 引当? それとも棚卸?
出発点は、完璧なRFPではありません。
いま一番困っている1行を先に言葉にします。
たとえば「棚卸が終わらない」
「引当が弱くて欠品と余剰が同時に起こる」
「ロケ/ロットが曖昧で探す時間が長い」。
このひと言で、最初に作る最小機能(MVP)が自然に決まります。
ここでA=今回/B=次期/C=当面やらないの優先度を固定すると、
既存とスクラッチの境界がブレません。
3. “ここだけスクラッチ”の置き場:ロケ・ロット・引当・棚卸
在庫の体感を変えるのは、いつも同じ4箇所です。
1つ目はロケーション管理。
棚番・段・列までの粒度を現実に合わせ、バーコードで一発移動できるようにするだけで、探す時間がごっそり減ります。
2つ目はロット/有効期限。
受入時にロットを必須化し、以降はスキャンで選ぶだけにすれば、トレーサビリティが自然に整います。
3つ目は引当(予約)。
受注時点でロット/ロケまで仮押さえできる仕組みを入れると、ピッキングの迷いが消えます。
4つ目は循環棚卸。
月末一斉ではなく、毎日10〜15分の循環棚卸で差異を潰していく運用に切り替える。ここをスクラッチの小画面で軽く作るのが、名古屋の現場では一番効きます。
4. 連携は“細い管”から:まずCSV、必要箇所だけAPI

全部をリアルタイム連携にしなくても構いません。
最初は時刻バッチ(15〜60分)で、販売管理や会計・ECと“細い管”をつなぐのが現実的です。
品目・得意先・倉庫・単位などのマスターは既存から取り込み、実績(受入・出庫・移動・棚卸)はスクラッチ側から返す。
詰まるのはコードの揺れなので、初週にコード対応表を作って揺れを吸収します。
頻回にぶつかる箇所だけ、あとからAPIでリアルタイム化すれば十分です。
5. バーコード設計は“1秒×100回/日”を削る
WMSの良し悪しは、現場の1秒に出ます。
伝票番号→ロケ→ロット→数量まで、
スキャン→テンキー最小の流れで止まらないこと。
入出庫・移動・棚卸は画面を分けず、タブ1つで往復できるようにしておくと、教育コストが下がります。
写真添付やメモは後回しでも構いません。
まずは動線が短いことに全力投資するのが近道です。
6.引当の現実:先に“約束”を決めると、欠品と余剰が同時に消える
引当で一番揉めるのは、「どの注文に、どのロットを、どの順番で押さえるか」。
ここだけはルールを先に文章で決めます。
先入先出(FIFO)、期限順、重要顧客優先などの優先度をリスト化し、
例外の扱い(代替ロット、部分引当)も短く書く。
スクラッチの引当エンジンは、その約束に忠実であれば十分です。
画面では、各注文の“引当済み/未”が色で一目、
ロットの残数が数字で一目に見えて、
所長が当日の“解き直し”を即断できれば合格です。
7.棚卸は“循環”に変える:差異はその日のうちに潰す
全社棚卸の1日に勝つには、毎日の10分を味方にするしかありません。
循環棚卸の候補ロケを毎朝リストアップし、
担当者がスキャン→数量→確定で終える。
差異が出たら、その場で理由を短文テンプレから選び、写真があれば添付。
差異はWMS側で一旦“保留在庫”に落とし、所長が当日内に解消する。
これだけで、月末に爆発していた差異が平準化され、締めのストレスが消えます。
8.移行の現実:最初から“汚れたデータ”で試す

移行は最後に一気ではなく、初週からテストデータを流すのが安全です。
既存の在庫CSVをそのまま読み、揺れ(単位・桁・全半角・名称)に出会ったら辞書で吸収する。
ロケの命名は倉庫-通路-棚-段の4段で統一し、
足りない現場には“予備ロケ”を最初から用意しておく。
最初の2週間は正しさより止まらないことを優先し、3週目から正確さを上げます。
9. 90日での作り方:数字が変わる順番に並べる
1〜2週目は、ロケ/ロットの基本設計とバーコード動線、受入・出庫・移動のMVPを動かします。既存とのCSV連携は“夜間1回+昼1回”程度の細い管で十分です。
3〜6週目は、引当の約束を決めてエンジンを入れ、循環棚卸を始めます。差異のログが日次で見えるようになると、現場の“悪い癖”が一気に浮きます。
7〜12週目で、APIが必要な箇所だけリアルタイム化し、ラベルや帳票のV2(体裁)を整えます。ここまでで、欠品/余剰の同時発生が沈み、棚卸時間が1/2になるのが典型的な変化です。
10.次の一歩
まずは無料相談でお気軽にご相談ください
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この記事を書いた人
株式会社ウェブロッサムの
代表:水谷友彦
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