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更新日時:2025.11.27
カテゴリー:blog

AS400は捨てなくていいのか?AI時代の「AS400 DX」現実解

1.AS400はまだ捨てなくていい?

AS400はまだ捨てなくていい?

中小製造業の情シスが考える「AS400 DX」とAI活用

社内でAS400(IBM i)がいまだに現役で動いていて、基幹システムは全部そこに乗っている。

でも、COBOLやRPGを書ける人はベテラン数名だけ。
ベンダーも高齢化していて、将来が正直不安。

そんな状況の中で、

「最近のAIって、COBOLも書けるらしいよ」
「AS400もAIに任せれば、なんとか延命できるんじゃない?」

という話を耳にすることが増えてきました。
中小製造業の情報システム担当としては、ちょっと期待したくなるフレーズです。

この記事は、そんな情シス担当の方向けに、

  • AIがあればAS400は本当に「大丈夫」なのか
  • AS400 DXをどう考えれば、突然の“基幹システム崩壊”を避けられるのか
  • AIをうまく使って「延命しながら、無理なく次の一手へ進む」には

を、できるだけ現場目線で整理してみたものです。

2. 「COBOLが書けない」以上に厄介なのは、業務ロジックのブラックボックス化

まず、よく言われる「COBOL技術者がいない問題」について。
たしかに、20代・30代でCOBOLを日常的に書いているエンジニアはほとんどいません。
ただ、AS400現場を近くで見ていると、本当に厄介なのは別のところにあります。

それは、会社独自のややこしい業務ルールが、AS400の中にしか存在しないことです。

たとえば、

  • 外注と自社加工が混ざったときの原価の持ち方
  • 得意先ごとに微妙に違う掛け率や締め日の扱い
  • かつての担当者が「現場の事情」で追加した謎のフラグや補正

こういったものが、仕様書ではなく、COBOLソースとベテラン社員の頭の中だけに残っている。
図面と現物がズレたまま、30年ラインが改造され続けているようなイメージです。

AIはたしかにCOBOLの文法を理解し、それなりにコードも書けます。
しかし、

「このお客さんの、このパターンの受注は、本当はどう扱うべきか」

といった判断は、AIにはできません。
ここは、製造現場や営業との関係、過去のトラブルの積み重ねまで知っている人間にしか分からない領域です。

つまり、AS400のリスクは「レガシー言語だから」だけでなく、
業務ロジックごとブラックボックス化していることにあります。

3. それでもAIは、AS400保守の心強い“見習い要員”になる

とはいえ、「じゃあAIは役に立たないのか」というと、そんなことはありません。
むしろ、うまく使えば、AS400を抱える情シスの負担をかなり軽くしてくれる可能性があります。

イメージとしては、“優秀な見習いプログラマが一人増える”感じです。

AIで優秀な見習いプログラマが一人増える

ソースを読む入口としてAIを使う

何千行もあるCOBOLソースを開いたとき、「どこから読めばいいのか分からない」というのは、情シスあるあるだと思います。
そんなとき、ソースコードをAIに渡して、

  • どのファイルを読み書きしているか
  • 処理の大まかな流れ(入力 → チェック → 集計 → 出力)
  • 金額計算や在庫更新など、重要そうな箇所

を要約させるだけでも、読み始めるハードルがかなり下がります。

AIの説明をそのまま信用するのではなく、「答え合わせをしながら読む」というスタンスにはなりますが、まっさらな状態から1行ずつ追いかけるより、精神的にだいぶ楽です。

仕様変更の草案づくりに使う

よくあるのが、「この条件のときだけ税区分を変えたい」「この伝票だけ、締めの扱いを変えたい」といったピンポイントの改修です。
こうしたときも、

  1. 変えたい仕様を日本語で書く
  2. 関連しそうなソースの抜粋をAIに投げる
  3. 「こう書き換えたら?」という案を出させる

という使い方ができます。

最終的な修正を決めるのは人間ですが、「ゼロからCOBOLを書き足す」のと、「AIが出した案をレビューして修正する」のとでは、工数もストレスも違います。

将来のリプレイスに向けた“翻訳者”として

AS400からのリプレイスを見据えるとき、壁になるのが「仕様がまとまっていないこと」です。
ここでも、AIはCOBOLの処理を擬似コード化したり、JavaやPythonに変換した“たたき台”を作ってくれます。

そのまま動くことは期待できませんが、新システムを作るベンダーに、

「今のAS400では、だいたいこういうロジックでやっています」

という資料を渡せるだけでも、話が進めやすくなります。
AS400 DXを進めるうえでの橋渡し役として、AIは十分に価値があります。

4. 「AS400 DX」は、AS400を止める話ではなく、“前に出さない(黒子)”話

AS400を止める話ではなく、“前に出さない(黒子)”話

ここからは、「AS400 DX」というキーワードで、構えずに考えてみます。

中小製造業では、

  • 受注
  • 生産指示
  • 在庫
  • 仕入・外注
  • 売上・請求

といった基幹データが、いまだにAS400に集約されているケースが多いと思います。
一方で、現場からは

  • 「画面が古くて使いにくい」
  • 「在庫をスマホやタブレットから見たい」
  • 「得意先ごとの履歴を、営業が外出先から確認したい」

といった要望もどんどん上がってきます。

AS400 DXというと、AS400を最新技術で置き換えるイメージを持たれがちですが、
現実的には、

「AS400をいきなり止めない。その代わり、“前面に出さない”ようにしていく」

くらいに捉えると、ちょうどいいと思います。

たとえば、

  • データの“正”は、当面AS400(DB2)に置いたまま
  • 日常的に触る画面は、少しずつWebシステムやクラウド側に移していく
  • Web側からAS400のデータには、バッチ or API or データ連携ツール経由でアクセス

という形です。

現場から見えるのは、
「古い緑画面」ではなく、「ブラウザで動く新しい画面」になりますが、
裏ではAS400が相変わらずしっかり仕事をしてくれている、という構図です。

5. AIを「AS400 DX」のどこに効かせるか

では、そのAS400 DXの中で、AIはどこに効いてくるのでしょうか。
いくつか、情シス目線で「ありそうなポイント」を挙げてみます。

  • AS400のトランザクションデータを集めて、需要予測・在庫最適化のモデルを作る
  • 不良やクレームの履歴とAS400の生産・出荷データを紐づけて、異常の予兆検知に活かす
  • AS400上のデータをもとに、「この伝票は今どこで止まっているか?」を答えてくれる社内向けチャットボットを用意する
  • AS400と他システムをつなぐデータ連携(CSV変換やコード変換)を設計する際に、AIにマッピング案を出させる

こういった取り組みは、どれも「AS400を捨ててから」ではなく、
AS400が稼働している今だからこそできるAS400 DXだといえます。

6.情シスとして決めるべきは、「どこまでAS400に背負わせるか」

どこまでAS400に背負わせるか

AIの登場で、AS400の技術者不足は「少しマシ」になりました。
AIをうまく使えば、今よりも少ない負担で既存システムを回しながら、
AS400 DXの準備を進めることができます。

ただし、「AIがあるから、ずっとAS400に乗り続けていい」とは言えません

情シスの立場で考えるべきなのは、

  • 今の業務の中で、「AS400が絶対に担うべき役割」はどこか
  • 逆に、「他システムやクラウドに任せた方が良い領域」はどこか
  • 3年後・5年後に、どんな構成なら“人が変わっても回せるか”

といったポイントです。

経営層に対しても、

  • 「AS400を捨てる/捨てない」の二択ではなく、
  • 「AS400 DXで役割を整理しつつ、無理なく次の基幹システムへつなぐ」という選択肢

を提示できるかどうかで、その後の投資の進み方が変わってきます。

7.まとめ:AIはAS400を「延命しながら安全に降りる」ための追い風

「AIがあるから、もうAS400は気にしなくていい」
そんな夢のような話では、残念ながらありません。

ただ、AS400を抱えている中小製造業の情シスにとって、AIはたしかに追い風です。

  • 既存COBOLの読み解きが楽になり
  • 小さな改修の負担が軽くなり
  • リプレイスに向けた仕様の見える化もしやすくなる

その結果として、「AS400を怖がりながら放置するしかない」状態から、

「AIを味方につけてAS400 DXを進めつつ、
延命しながら安全に降りる段取りを組める」

状態へと、一歩前に進むことができます。

もし社内で、

  • AS400の将来がなんとなく不安
  • でも、何から手をつければいいか分からない

という声が出ているようなら、
まずは「AI + AS400の現状可視化」から、小さくAS400 DXを始めてみるのも一つの手です。

8.次の一歩

まずは無料相談でお気軽にご相談ください

#スクラッチ開発 #システム開発 #AS400 #DX

水谷友彦

この記事を書いた人

株式会社ウェブロッサムの
代表:水谷友彦

中小企業の業務効率化を
デジタル戦略でサポート

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