AS400ユーザーの未来:IBMのシステムをアップグレードして使い続けるのがベストなのか?

1.はじめに
IBMのAS400(現在のIBM i)は、多くの企業にとって長年にわたる基幹システムの柱です。しかし、ハードウェアの老朽化、人材不足、DX(デジタルトランスフォーメーション)対応の必要性などの課題を抱える中、
「IBM i をアップグレードして使い続けるのが最適な選択なのか、それとも別の道を選ぶべきなのか?」
この記事では、IBMのシステムを継続利用するメリット・デメリットを整理し、今後の戦略について考察します。
2. AS400(IBM i)をアップグレードして使い続ける選択肢
・ 最新のIBM i にアップグレードする
IBMは現在も**IBM Power Systems(Power10など)**を提供しており、IBM i(AS400)の最新バージョンも定期的にリリースされています。
現在のシステムを維持しつつ、ハードウェアとOSをアップグレードすることで、セキュリティやパフォーマンスの向上が可能です。
【アップグレードの主な方法】
- IBM i の最新バージョン(例:IBM i 7.5)への移行
- ハードウェアを Power9 / Power10 に更新
- クラウドベースの IBM i(IBM Cloud for i)を活用する
・ IBM i 継続利用のメリット
・ 既存システムの資産を活かせる
長年にわたりカスタマイズしてきたRPGやCOBOLの業務アプリをそのまま使用可能。業務フローを大きく変更せずに済む。
・ 高い安定性と信頼性
IBM i は 99.99% の稼働率 を誇る安定したシステムで、ダウンタイムが少なく、基幹システムとしての信頼性が高い。
・ 最新のIBM iはオープン技術と連携可能
最新バージョンでは Python、Node.js、REST API などのモダンな開発環境を活用可能。クラウドアプリやWebシステムとの統合も容易に。
・ クラウド対応も可能
オンプレミスだけでなく、IBM CloudやAWSのIBM iホスティングを利用すれば、クラウドの柔軟性も享受できる。
【IBM i を使い続けるデメリット】

✓ハードウェア・ライセンスコストが高い
IBM Power Systems の最新ハードウェア(Power10など)に移行する場合、初期費用で500万〜数千万円のコストがかかる可能性あり。
✓IBMエンジニアの人材不足
AS400を扱えるエンジニアの高齢化が進み、新たなエンジニアの確保が難しくなっている。運用・保守の属人化リスクが高まる。⇒保守費用の人件費に影響。
✓クラウドネイティブ技術との完全統合は難しい
IBM i は最新技術(コンテナ、マイクロサービス、サーバーレス)との親和性が低く、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるには限界がある。
3.IBM i を使い続ける vs. 別のシステムに移行する
IBM i をアップグレードして使い続けるのが最適かどうかは、企業の状況によります。以下の3つの視点で比較してみましょう。
比較項目 | IBM i をアップグレード | 他システムに移行(脱IBM) |
初期コスト | 高額(ハードウェア+ライセンス) | 高額(ERP導入+データ移行) |
運用コスト | 既存の知見を活かせるが人材不足による割高リスクあり | クラウド化で低コスト化可能 |
安定性 | 非常に高い | システムによる |
モダン技術対応 | 限定的(APIは活用可) | クラウドネイティブ技術をフル活用可能 |
人材確保 | 難しい(AS400エンジニア不足) | クラウド・Web技術なら確保しやすい |
4.どの選択肢がベストなのか?

①②③の3つのパターンに分類
① IBM i をアップグレードして使い続けるのが適している企業
・ 既存の業務システムがIBM i 上で安定して稼働している
・ AS400のRPG・COBOLアプリをそのまま維持したい
・ 初期投資は可能だが、大幅なシステム変更は避けたい
・ IBM i エンジニアの確保が可能(社内にノウハウがある)
② クラウドERP(SAP, Oracle, Microsoft Dynamics)に移行すべき企業
・ DXを進めたいが、IBM i では制約が多い
・ ERPシステム(会計、在庫、販売管理)を標準化したい
・ 将来的にAS400の保守や運用負担を軽減したい
・ 最新のクラウド技術(AI、ビッグデータ、API)を活用したい
③ ハイブリッド戦略(IBM i を段階的にクラウド化)
・ IBM i の資産を活かしつつ、徐々にクラウドシフトしたい
・ クラウドストレージやクラウドバックアップから始めたい
・ IBM i とクラウドアプリをAPIで連携させたい
5.まとめ:IBM i をアップグレードして使い続けるのはベストな選択か?

結論として、IBM i をアップグレードして使い続けるのは
「短〜中期的にはベストな選択肢」だが、長期的には慎重な検討が必要です。
💡 IBM i 継続は有力な選択肢だが、クラウドとのハイブリッド戦略も視野に入れるべき。
💡 完全な脱IBM(ERP移行など)を考える場合は、段階的な移行を計画的に進めることが重要。
企業のビジネス戦略や予算、システム要件に応じて、最適なシステム戦略を選択していきましょう!
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この記事を書いた人
株式会社ウェブロッサムの
代表:水谷友彦
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