Excel脱却の正攻法:名古屋の中小企業が半年で効果を出す手順
1.はじめに

「Excelは便利、でもこのままでは限界かもしれない」。
名古屋・愛知の企業からいただく相談の多くは、この一言に尽きます。
まず最初に伝えたいのは、Excelを悪者にしないこと。現場で育ってきた“便利”の積み重ねには理由があります。
だからこそ、脱却のスタート地点は“否定”ではなく、いまの良さを尊重して写し替えることです。
本稿は、半年で手応えを出すための現実的な手順を、製造・内装・物流など東海の実情に寄せながらまとめました。
2. なぜExcel脱却はむずかしいのか
Excelが強いのは、速さ・自由さ・手元感です。思いついたその日に列を足せる。現場で完結できる。誰かの承認を待たなくていい。だから定着しました。
一方で、組織が大きくなるほど、「正本がどこか分からない」「履歴が追えない」「他システムと息が合わない」という壁にぶつかります。ここが“脱却”のサイン。
目的は「Excelゼロ」にすることではありません。“正本を一箇所にして、例外に強い流れを作る”ことです。
3. 半年で効かせる4ステップ(やる順番がすべて)

① 現場の1日を書き出す(まず“見る”)
最初にやるのは要件の難しい整理ではなく、現場の1日の物語を言葉にすることです。
誰が、いつ、どの列を埋めて、どのファイルを使い回しているのか。
ここで大切なのは、不都合も含めて“ありのまま”を出すこと。
② MVPを決める(“今回やる/次にやる”を分ける)
全部を一度に変えようとすると、必ず失敗します。
A=今回/B=次期/C=当面やらないを明文化し、Aだけでリリースする前提にします。
たとえば「受注→手配→原価→請求」のうち、“請求だけ先に一本化”でも構いません。
小さくても、“正本が決まる”体験が全体を前進させます。
③ 並行運用で定着を確認する(“使って直す”)
教育よりも効果があるのは、摩擦の少ないUIです。
テンキーで打てる、貼り付けに強い、写真・証憑が同じ画面で終わる
——こうした1秒×100回/日の設計が、最短の定着策。
1〜2スプリント分だけ並行運用し、現場の違和感を採りに行きましょう。
④ 証拠→承認→連携の順で広げる(“育てる”)
定着が見えたら、証憑(写真・PDF)→承認フロー→外部連携(会計/WMS等)の順に拡張します。
連携は最後で構いません。先に現場の“止まり”を消すほうが、費用対効果が高いからです。
ここまでで、最初の公開からおよそ4〜6ヶ月。数字の手応えが出始めます。
4. 名古屋・愛知のスナップ実例
豊田の製造A社では、
受注・工程・原価の列が部署ごとに違い、“同じ項目なのに意味が微妙に違う”状態でした。
まず請求だけをスクラッチで一本化し、画面の並びを現場動線に合わせたところ、
投入工数は3割強削減。
未請求の取りこぼしも減り、キャッシュフローが改善しました。
名古屋市内の内装B社は、
出来高計算をExcelで回していましたが、写真と証憑が別フォルダで迷子に。
写真アップ→出来高→請求までを1画面に寄せると、
入金までのリードタイムが約3割短縮。
刈谷の物流C社は、
棚卸の差異調査に人が張り付いていました。
不足・余剰・移動中という例外を先に設計し、バーコードと在庫アラートを合わせると、
棚卸時間は半分、誤差は4割減。
どの現場でも効いたのは、“例外に寄り添う設計”でした。
5. つまずきやすいポイント(避け方つき)

第一に、シート構造の持ち込み過多。
Excelの“見た目”をそのまま再現しようとすると、システムは重く、不自由になります。“列の意味”だけを正しく移す意識が大切です。
第二に、帳票の過剰再現。
過去の様式を完コピするほどコストが膨らみます。
最初は実務に必要なミニ版で十分。法定・対外帳票だけ厳密に。
第三に、移行の後回し。
最後にデータを流し込めば済む、は幻想です。
最初のスプリントからテストデータを入れて、コード体系や名前の揺れに向き合いましょう。
そして忘れがちなのが、意思決定のリズム。
経営・現場・開発が週1回30〜60分で決める場を確保できるかが、1〜2ヶ月の差になります。
6.体制と道具のミニガイド(無理をしない選択)

VPSとクラウド、どちらが正解かは運用できるかで決まります。
小さく始めて固定費を抑えるならVPS、
伸びに応じて弾力的に増やすならクラウド。
どちらにせよ、監視・バックアップ・セキュリティの基本運用を最初に決めるのが近道です。
UIや帳票は、共通部品のルールを先に作っておくと、横展開が速くなります。
7.よくある質問に先回りしておきます
Q.「ノーコードで始めて、後からスクラッチに移せる?」
—— はい、現実的です。データモデル・権限・帳票を“移しやすい形”で整えておけば、痛みは小さく済みます。
Q.「教育はどれくらい必要?」
—— 思っているより少なくて済みます。摩擦のないUIに投資し、並行運用で“使って直す”ほうが早いからです。
Q.「費用感は?」
—— 範囲にもよりますが、記事「費用相場(名古屋版)」で示したスモール300〜600万(2〜4ヶ月)が起点になります。“今回どこまで効かせるか”の合意が、最良のコスト対策です。
8.次の一歩
まずは無料相談でお気軽にご相談ください
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この記事を書いた人
株式会社ウェブロッサムの
代表:水谷友彦
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