業務システムを延命するか?新調するか? 経営視点での判断基準
1.はじめに
企業のITシステムは、ビジネスの成長や市場環境の変化に対応するために、継続的な見直しが求められます。
しかし、現在使っている業務システムを「延命するか」「新しく調達するか」という判断は、経営にとって難しい選択です。
コスト、業務効率、競争力の維持など、様々な要因が絡むため、慎重な検討が必要になります。
本記事では、経営視点でシステムの延命と新規調達の判断基準を整理し、意思決定のポイントを解説します。
2. システム延命 vs. 新規調達の基本的な考え方
まず、それぞれの選択肢のメリットとデメリットを整理します。
2.1システムを延命する場合のメリット・デメリット
✅ メリット
- 初期投資が不要:新規システム導入に比べて、大きな投資を抑えられる。
- 現場の業務がスムーズ:既存システムを使い続けるため、ユーザーの再教育コストがかからない。
- 業務プロセスの維持:新システム導入による業務フロー変更のリスクを避けられる。
❌ デメリット
- 技術的な制約:システムの老朽化により、拡張や新機能追加が困難になる。
- セキュリティリスクの増大:古いシステムはサポート終了に伴い、脆弱性が増す可能性がある。
- 運用コストの上昇:老朽化したシステムの維持費がかえって高額になることもある。
2.2新規システムを調達する場合のメリット・デメリット
✅ メリット
- 最新技術の活用:クラウドやAIなどの最新技術を活かし、業務効率を向上できる。
- 保守コストの削減:最新システムでは、ハードウェアの維持費や古いプログラムの修正コストを削減可能。
- セキュリティ強化:新しいシステムは最新のセキュリティ対策が施されていることが多い。
❌ デメリット
- 初期投資が大きい:新規導入には開発・導入・移行コストがかかる。
- 業務フローの見直しが必要:新しいシステムに合わせて業務プロセスを変更する必要がある。
- 導入リスク:運用開始時のトラブルや、社内の適応に時間がかかる可能性がある。
3.経営判断における主要な判断基準
① コスト(TCO:総コスト)の比較
- システムの延命にかかる改修費・保守費と、新規調達にかかる導入費・運用費を比較する。
- 5年~10年スパンで「どちらがより費用対効果が高いか」を分析する。
- 隠れコスト(例:古いシステムの運用負担(2025年問題:増加傾向になる)、人件費、セキュリティ対策費)を見落とさない。
💡 判断ポイント:
🔹 既存システムの延命コストが新規導入費用の70%以上になるなら、新システム導入を検討。
🔹 保守費用が年々増加し、5年後に新規導入より高くなる場合は、新システムに移行する方が合理的。
② システムの現状と将来性
- 技術的な限界:サポート終了や技術的な制約(拡張性・連携性)があるか?
- 業務との適合性:現場のニーズを満たせるか?運用負担が増していないか?
- ベンダーのサポート状況:開発元がサービス終了を予定していないか?
💡 判断ポイント:
🔹 サポート終了・部品供給停止が見えているなら、新システム導入の準備を開始。
🔹 既存システムで業務改善が難しい場合は、新しい仕組みを取り入れるべき。
③ 競争力と市場環境
- 競合他社と比較して、システムの優位性が保たれているか?
- 最新技術(AI・RPA・クラウドなど)を導入すれば、業務効率やサービス向上につながるか?
💡 判断ポイント:
🔹 競争優位性を失いつつあるなら、新システム導入によるDX(デジタルトランスフォーメーション)を検討。
🔹 市場変化に対応できない場合、新システム導入が企業成長のカギになる。
④ 社内リソースと移行負担
- 社内IT人材の状況:既存システムの維持・運用が可能か?
- 業務影響:新システム導入で、業務がどれだけ混乱するか?
💡 判断ポイント:
🔹 システム移行に伴う混乱を最小限に抑えられるかどうかを評価する。
🔹 IT人材の確保が難しい場合、SaaSやクラウドシステムを活用する選択肢も考慮。
4.判断のためのフレームワーク(マトリクス分析)
以下のようなマトリクスを用いると、経営視点での判断がしやすくなります。
コスト低 | コスト高 | |
業務適合性高 | ▶ 延命(現行システムの改修で対応可能) | ▶ 改善型移行(部分的なシステム変更) |
業務適合性低 | ▶ システム刷新(クラウドやSaaS活用) | ▶ フルリプレイス(全システム更新) |
5.まとめ:経営判断のポイント
🔹 短期的なコスト削減 vs. 長期的な投資のバランス
🔹 システムの維持コストが高騰していないかを定期的に評価
🔹 市場環境や競争力の観点から、将来の成長を考慮
🔹 移行負担や社内リソースの影響を見極め、スムーズな導入計画を策定
最適なシステム運用は、単なるITの問題ではなく、企業の競争力や成長戦略にも直結します。
変化の激しいトピックスでもありますので、5年後10年後に振り返って100%正しい判断だったと思えることは少ないかもしれませんが、現時点で最も妥当な選択肢を洗い出すことはとても重要です。
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この記事を書いた人
株式会社ウェブロッサムの
代表:水谷友彦
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